トラック隊列走行が変えていく日本の物流!メリットと問題点を解説

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トラック輸送を効率よくするためにどうしたらよいと思いますか?大型トラック1台で運送できる物量は決まっています。
1人のドライバーが2台のトラックを同時に運転できれば効率は2倍になります。そして、3台であれば3倍です。
トラック隊列走行は物流の効率化とその他の様々な社会的な問題を解決するために国が中心となり現在進められているこれまで無かったトラックの運送スタイルです。直近では韓国IT大手カカオの子会社で配車アプリ「カカオT」を運営するカカオモビリティーが2021年11月27日、ソウル近郊の公道で、大型貨物車の隊列走行用運用システムを実演し、合流、隊列維持、離脱など、運用技術の一連の流れを実演しています。

参考:トラック隊列走行用システム、カカオが実演

① トラックの隊列走行ってなに?

トラックの隊列走行とは、「隊列を組んだ2台以上のトラックで走行すること」です。将来的には運転手は先頭車両だけに乗り、隊列を走行させる自動運転を目指していますが、それまでに段階を踏みながら高速道路を実際に走るテストを行っています。

すでに行われた実証テスト

まず、2018年以降行われているテストでは3台のトラックの隊列全車両にドライバーを乗せて、最新の通信技術を使って先頭車両に続く後続車両は同じ間隔を保ちながら走行しました。運転するのは先頭の車両に乗るドライバーだけで、後続するトラックのドライバーは万が一の緊急時に備え運転せずに乗っています。

このテスト運転はすでに成功しており、ニュースでご存じの方も多いかもしれません。
これが現在、新東名高速道路の浜松いなさIC~長泉沼津IC間で行われている実証のためのテストです。

これから行われる実証テスト

次の段階として、1台目は有人、2台目以降の後続車両にはドライバーを乗せない後続車無人隊列走行の実現を目指しています。公道ではない、テストコースで実際に後続車にドライバーを乗せない隊列走行は成功しているので、最終目的の後続車無人隊列走行の成功は時間の問題でしょう。

トラックの隊列走行を目指して国が『制度整備』、トラックメーカーが『技術開発』、運送業者が『事業化』とそれぞれを担当して事業実現に向けて取り組んでいます。それぞれが担当する分野の整備・開発を進めて『トラックの隊列走行』は実現化され、商業化されていきます。

トラックの運転技術の自動化だけで『トラックの隊列走行』が実現できないことはご理解いただけると思います。新しい道路交通法の整備や、広いトラックヤードの建設、そこからエンドユーザーに向けての再配送など新しい物流システム整備などを国をあげて事業化しようとしています。

参考:トラックの隊列走行について 国交省

参考:日本自動車工業会(トラック隊列走行への取り組み)

② 隊列走行が進められている理由

隊列走行イメージ

なぜトラックを隊列走行させなければならないのか。ひと言で言えばそれは世の中の動きについて行くためであり、以下のような問題に対処していく手段として進められています。

少子高齢化の問題

ご存じでしょうか、日本の人口は2010年をピークにして年々減少しています。令和元年(2019年)時点で、日本の総人口は1億2,617万人です。そして生産労働人口と呼ばれる15歳から65歳の人口も当然減少し、この減少していく生産労働人口で高齢者を支えていく時代がやって来ます。

この少子高齢化が運送業界におけるドライバーの成り手を確保しづらくさせ、ドライバーの高齢化に拍車をかけてしまっているのです。そのような問題を解決するためにも『トラックの隊列走行』が必要になってくるのです。

そしてこれは労働環境の改善となり、国が推進している『働き方改革』にもつながってくるのです。

参考:高齢化の状況 内閣府

『脱炭素社会』にむけての問題

菅義偉首相が2020年10月26日の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。

これから30年間で日本中の官民挙げてのすべての関係者が目標を達成するために努力しなければなりません。日本の貨物輸送の90%以上を占めるトラック輸送の排気ガスをゼロにすることは簡単なことではありません。しかしながら、これは日本だけで考えることの出来ない世界で取り組まなければならない『地球温暖化』という環境問題を解決していくための『社会変革』であり避けて通ることの出来ない重要課題なのです。

参考:運輸部門における二酸化炭素排出量 国交省

交通事故の削減

『トラックの隊列走行』によって労働の効率を上げ、ドライバーの疲労軽減につなげて運転ミスを減らします。これによって安全性は向上して交通事故の削減になります。
そして安全走行は輸送品質の向上につながっていきます。
あってはならない事故を減らし、お預かりした商品を無事にお届け出来る当たり前を日常にすることが出来るのです。

③ トラックを隊列走行させるための問題点

問題点

さまざまな社会の要求に応えて『トラックの隊列走行』を実現させなければならず、『トラックの隊列走行』の実現が簡単ではないのが現実です。クリアしていかねばならない問題は以下の3点です。

道路・トラックステーションの整備

トラック3台での隊列でも全長60mの長さになります。この長さは日本全国津々浦々のエンドユーザーのもとまで走れるわけがなく、信号のない直線の多い高速道路での走行実現に向けてテスト走行を続けています。
『隊列走行』で渋滞や事故は起こすわけにはいきません。そのために1車線増設してテスト用専用レーンとして新東名高速道路では設けています。
これを全国の主要高速道路に設けるためには車線増設用の用地が必要となり、もちろん増設工事も行わなければなりません。
そしてこの隊列を受け入ることが出来るトラックステーションが必要になり、そのための用地の確保も建設工事も行わなければなりません。

法整備

『道路交通法』、『道路運送車両法』、『道路法車両制限令』などに手を加えなければなりません。
社会変革の一つであるこの『トラックの隊列走行』については警察庁での検討はすでに始まっており、『牽引』とみなすかどうかの検討から、車間距離、走行速度車列の台数・全長から運転免許制度のあり方まで検討されています。
連結が途切れた場合・後続車に不測の事態が発生した場合や万が一の事故でのこれまで生じることの無かったケースを想定して保険の取り扱いなどの問題も出てくることでしょう。

社会的認知の整備

社会から受け入れてもらうためのPRを十分行うことは交通事故の軽減のためにも必ず必要なことです。
若者からお年寄りまで、運転を行うすべての人がこれまで無かった『トラックの隊列走行』に遭遇して驚くことなく受け入れてもらうためのPRや教育が必要になってくるでしょう。

④ まとめ

トラック

トラックの隊列走行と、モーダルシフトの似ていて非なるところ

モーダルシフトをご存じですか。
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい電気で走る鉄道や一度に大量の荷を運べる船舶での輸送へと転換することをいいます。
日本全国に700万台以上あるトラックの一台一台がガソリンを燃やして動くエンジンをつけており、その結果として二酸化炭素を発生させ、環境破壊につながっていきます。
その考えでモーダルシフトは推進されています。

『モーダル』とは『モード』、『方法』のことです。
輸送方法を変えることで環境保全と経費削減につなげるのです。

しかしこの『モーダルシフト』は思うように進んでいないのが実情です。
貨物列車や船舶には決められた時間に走ったり、定位置から定位置への移動のようなルールがあります。
トラックでの輸送のように融通が利かないのです。
日本における現在の物流の右肩上がりは、ご存じのようにひとえにインターネットの発展による物流量の増加からです。
決められた高速道路の車線を決まったトラックヤードに向かって走る『トラックの隊列走行』は鉄道や船舶の輸送に形こそ似ていますが、スピードが全く違います。

トラックステーションからトラックステーションへの『トラックの隊列走行』は鉄道のモーダルシフトに似てはいますがスピードや自由度が違ってきます。
今パソコンで注文すれば明日には手元に届くようなネットショッピングに『モーダルシフト』は不向きなのです。
消費者が、時間がかかっても商品が届けばいいのだと価値観を変えてくれない限り『モーダルシフト』が『トラックの隊列走行』に勝ることはないでしょう。

まとめ

着々と進んでいる『トラックの隊列走行』は菅義偉首相による所信表明演説での「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」の宣言により拍車はかかっています。

これは運送業界に限らず、日本の全産業において同じことでしょう。
2020年は新型コロナウイルスによって誰もが経験しなかった苦労を強いられたことでしょう。
しかし、このことによって国は脱炭素・デジタルを軸に追加経済対策73兆円超の予算を組みました。
『トラックの隊列走行』の実現はさらに近づき、『東京オリンピック・パラリンピック』と明るい話題が続き、2021年は日本にとって新たな幕開けの年となるのではないでしょうか。

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