2020年12月に、日本では「遅くとも2030年までにガソリン車販売廃止になる」という報道がされました。その理由は、ガソリンなどの化石燃料を燃やしてエンジンで走る自動車が環境に悪い影響を与えていることです。
今回の報道を受けて日本の自動車の現状はどのようなものなのでしょうか。ガソリン車が販売廃止される詳しい背景や将来構想、運送業界が受ける影響を説明します。
ガソリン車販売廃止における世界の動向
今は世界中の自動車マーケットが「ガソリン車禁止」から「電気自動車販売」へと変化を遂げようとしています。これから、ガソリン車販売禁止を目指している国をいくつか挙げていきます。
アメリカ
アメリカでは2035年までにガソリン車販売禁止を目指しており、電気自動車の普及率を毎年上げる目標を立てています。また、カリフォルニア州では、2035年までにガソリン車が段階的に販売禁止されることが発表されており、他のCARB STATESも同じです。
イギリス
BBCのレポートによると、イギリスでは2030年までにガソリン車販売禁止を目指しています。イギリスでは、元々の目標は2040年でしたが、イギリス首相のポリス・ジョンソンが目標を5年間前倒しにし、2020年11月にさらに5年間時期を早めています。
中国
NlKKEI Asiaによると、中国では2035年までにガソリン車をHV(ハイブリッド車)以外、販売禁止を目指しています。中国は世界最大の炭素排出国であるため、電気自動車を取り入れることで炭素が激減する世界を目指せることでしょう。
ノルウェー
ノルウェーでは2025年までにガソリン車販売禁止を目指しています。これに関して、ノルウェーの気候大臣が、SNSのTwitterでツイートしています。
ドイツ
ドイツでは2030年までにガソリン車販売禁止を目指しています。この方針はドイツ連邦参議院を通過しており、ドイツの決断はEU圏に大きく影響を与えているそうです。ドイツの方針は2017年の選挙前にヘンケル首相が発表しました。
オランダ
オランダでは2025年までにガソリン車の販売禁止を目指しています。政治家のグループがガソリン車とディーゼル車の販売を禁止することを提案し、オランダの労働党が完全な移行を望み、オランダ議会の下院で承認されました。
フランス
フランスでは2040年までにガソリン車の販売禁止を目指しています。この発表はフランス政府から発表されており、国務大臣が行っています。
この他にも、スペイン、アイルランド、アイスランド、イスラエル、カナダ、スウェーデンなど数多くの国と都市で同じような政策がされています。日本に限らず、ガソリン車販禁止の動きは世界中で起きているようです。
日本でガソリン車が販売廃止される背景
世界中でガソリン車販売禁止の傾向にありますが、日本ではなぜ2030年までに販売禁止の目標がたてられたのでしょうか。
1つめは、日産などの有名な自動車メーカーが新しい電気自動車をどんどん開発していることです。電動パワートレインを用いた車が開発されるようになり、次期発売される車は電気自動車が多いです。日産では、第二世代e-POWERを搭載した電気自動車の新型ノートが発売されます。このように、日本の車業界は次々と電気自動車を発売するため、日本全体がガソリン車から電気自動車へ移行できるようになるからです。
2つめの理由は、海外で次々とガソリン車禁止の目標が打ち出されていることです。1つめの見出しでも紹介しましたが、世界各国でガソリン車禁止の目標が打ち出され、世界中がその方へと向かっています。そうした中で日本も明確な目標を打ち出し、いち早く動きをリードするという狙いがあるそうです。
日本で自動車の電動化が進む将来構想
日本では、ガソリン車禁止から電気自動車普及の目標が打ち出されましたが、果たして10年後に本当に電気自動車は普及するのでしょうか。日本は雪国でもあるので、車が立ち往生してしまった場合はどのように充電すればよいのかなど色々な問題が懸念されています。そのため、電気自動車が普及できるのか、疑問に思う人もいるでしょう。
日本の車業界は世界でも一歩リードをしており、1997年にトヨタが世界初の量産ハイブリッド車を発売しました。その流れに乗って三菱自動車工業、日産自動車が電気自動車を発売し、世界的に見ても日本での電気自動車の発売はとても早かったのです。
しかし、それまでに発売された日本の車は排出ガスの量の多さにより、世界的に問題となりました。これを踏まえて日本では、ホンダなどほかの自動車メーカーも電気自動車を発売するようになります。ですが、リチウムイオンバッテリーの生産に制約があり販売台数はとても少なく、現在の日本を見ると、国内新車販売台数のうち電気自動車はわずか1%にも達していません。
このような状況で10年後に電気自動車のみが販売されることを想像するのは難しいでしょう。しかし、政府が打ち出した目標なので、何かしらのプランがあってのことです。
2030年までにガソリン車販売禁止される目標は、次のように叶えられます。
まずは、電動車は4つのタイプが想定されています。
- 1. HV→ハイブリッド車でエンジンと電気の両方で走行する
- 2. PHV→プラグインハイブリッド車で充電ができる
- 3. EV→電気で走行する電気自動車
- 4. FCV→水素で発電して走行する燃料電池車
2030年には以上の4つの車が販売され、ガソリンのみで動く車は販売されないということです。
つまり、日本ではHVを含めた形でガソリン車の販売禁止を目指しており、エンジンと電気の両方で走るハイブリッド車を活かして目標の達成を図っています。
最後に、この目標を叶えるために欠かせないのが自動車メーカーの生産体制です。
全ての車を電気自動車として生産するだけでなく、長距離を走る事ができたり、充電時間の短縮や大雪が降る地域でも問題無く使用出来る事など、車自体の水準を上げていかなければなりません。
また、自動車メーカーは他社ブランドの部品を使用するなど、協力体制のもとで生産を行っています。取引先のメーカーも電気自動車の生産に合わせて事業のシフトを変えなければならないので、この目標を叶えるためには様々な支援策が必要になるでしょう。
運送会社が受ける影響
ガソリン車販売禁止に合わせて、日本の産業が大きく変わります。今回取り上げるのは、運送業です。運送業はトラックなどの車を使って仕事をするので、ガソリン車販廃止によって大きな影響を受けることが懸念されます。
運送業では主にディーゼル車が使われています。理由は価格が安いからです。そのため、運送業に限らず、商用で使われる車はディーゼル車が多いです。ガソリン車販売禁止で運送業が受ける影響はここにあります。商用のガソリン車が購入できなくなるので、電気自動車を購入する費用が多くかかってしまい、事業に経済的な損失を背負わせてしまいます。
自家用の自動車は多少高価であっても消費財であり、本人が納得すれば経済的に多少の損があっても、価値があれば購入することが多いです。しかし、先ほども書いたように、運送業などの車は生産材なので、そうもいかないでしょう。運送業などの産業で電気自動車の普及が進まないのは、経済的に損失が大きいからです。
また、トラックなどの大型車は構造面的にかなりの量のリチウムイオンバッテリーの搭載が必要です。トラックなどは車体が大きいのでバッテリーの量も多く搭載が可能ですが、荷物などを運ぶので、そこまで多く搭載できないのが現状です。トラックを走らせるためのバッテリーよりも、荷物を多く載せられた方が運搬の効率が上がるでしょう。そう考えると、運送業の電気自動車の導入はあまり容易ではありません。
とはいえ、運送業での電気自動車の導入はいくつかのメリットをもたらしています。まずは、騒音や振動が少ないので運転者の負担を減らします。モーターはほとんど変速しないので運転自体がとても楽です。さらに、エンジンに比べて作動が早いので安全性も高いです。このように、トラックなどの電気化は労働環境を大きく改善するので、運転者にとってのメリットは大きいでしょう。
まとめ
日本では2030年までにガソリン車廃止の目標が打ち出されました。ガソリン車の代わりに電気自動車が販売されるようになり、日本に限らず世界各国でこの動きは高まっています。
2030年までに目標を達成するのは容易ではありませんが、政府が打ち出した方針によってなんとか達成へと向かえるでしょう。しかし、それに合わせて運送業などの生産業では大きな影響を受けることもあります。廃止による影響をカバーできるような方法があることで、この政策がさらによいものになっていくのではないでしょうか。
コメント