近年のAIやIoT、ビッグデータの発展によるITの進化には著しいものがあります。そしてそれらは数々の問題を解決するために生み出され、活用され、成果を出してきました。
今回は物流業界の問題である人員不足や環境破壊を解決に導くであろう「LaaS」について解説します。
LaaSってどんなもの?
LaaS(ラース:Logistics as a Service)は国土交通省が2019年に発表した物流の将来のビジョンのことを言います。
LaaSとはAIやIoTを利用した物流の進化を目指すものですが、LaaSの紹介の前に前進となったMaaS(マース:Mobility as a Service)について説明します。
身近なもので例えるなら飛行機の搭乗手続きがスマホひとつでできるようになり、電車や新幹線、バスなど現在地から目的地までの移動手段を一括で表示をしてくれます。
タクシーに関してもスマホで近くのタクシーを呼んで表示された料金で目的地まで乗せて行ってくれます。
これらの移動に関するサービスはMaaS(Mobility as a Service)と言います。
人の移動に関しては技術が進歩し、革新的な進化を遂げています。
そして次なる課題として掲げられたのは物の移動、つまり物流の進化です。
物流業界では通販の大きな発展により物流による輸送業務は年々需要が増しており、ドライバーの人手不足や営業所から配達先までの「ラストワンマイル問題」が物流業界の労働環境の悪化を引き起こしています。
物流業界における人員不足は解消する打開策が掴めず、今後も需要が伸び続けることが予想されることから打ち出されたのがLaaSです。
- LaaS(Logistics as a Service)とは
- ・AIやIoTを活用した物流を最適、効率化
・ドローンや無人ビークル、無人トラック運送による省人化
による物流の将来的なビジョンを実現するための目標のことをLaaSといいます。
「人の移動」で革命を起こしたMaaSのように「物の移動」もLaaSにより革命を起こすのを目標としています。
ここでは物流業界の革命を起こすためのLaaSについて、
物流業界におけるLaaSの具体例
- 物流センターの共有化
- ラストワンマイルにおける無人化
- 幹線道路の隊列走行による効率化
2021年にLaaSはどこまで進むのか
- 特定のエリアでの自動配達ロボットによる配達
- 倉庫・システムのクラウドによる共有化
- AI・IoTを利用した配達の効率化
- トラックを持つ運送業者と企業のマッチングサービス
- 配送トラックのEV(電気自動車)化
- 特定のエリアでの自動配達ロボットによる配達
について解説していきます。
物流業界におけるLaaSの具体例
LaaSが物流に革命を起こす目標というのは理解できたけど実際どんなことができるのか疑問を持つ方も多いでしょう。
ここではLaaSが目標として発表している
・ 施設・データの共有化
・ ラストワンマイルの無人化
・ トラックによる幹線道路の隊列走行
について説明します。
具体的にLaaSがどんなビジョンを持っているのかご覧ください。
① 物流センターの共有化
LaaSでは物流における手段や施設を共有して最適ルートで運ぶことを目標にしています。
従来、物流は企業ごとに異なる倉庫で自社の荷物のみを取り扱ってきました。
現在も大手の物流企業は自社の荷物のみを取り扱っていることがほとんどですが、物流倉庫のシェアリングを行っている企業もあります。
倉庫のシェアリングのメリットは、輸送する際に同じ倉庫にある荷物を同じ方向へまとめて出荷できることです。
輸送の効率化のみではなく、輸送料金の削減にも繋がり、ドライバーの人員も少なくて済みます。
倉庫での荷物の在庫や出荷・入荷等の情報は倉庫管理システム(WMS)によりまとめて管理されているので出荷間違いや在庫不備も起こりくい特徴があります。
システムを全国の物流企業全体で行うことができれば効率的な輸送・人手不足解消を実現できます。
② ラストワンマイルにおける無人化
LaaSではラストワンマイルの輸送において無人ビークルが配送をするための道路の整備を目標にしています。
配達店から届け先まで・送り主から配達店までの工程を「ラストワンマイル」といいます。
ラストワンマイルの輸送には課題が多く、都市や市街地では荷車や自転車による配送をするのが一般的です。また、配達先が不在のときに時間や日を改めて再配達することも問題になっています。
ラストワンマイルの問題を解決するためにLaaSでは無人配送ロボットやドローンを利用した無人配送を目標として掲げられています。
日本のみならず世界的にもロボットを使用した配達の研究会や実験が行われており、実現に向けた取り組みがされています。
③幹線道路の隊列走行による効率化
LaaSでは高速道路などの幹線道路にトラック専用の走行空間を作るビジョンが掲げられています。
実現できると専用の走行空間を作ることでトラックによる自動走行を隊列で行うことができます。
自動走行が可能になればドライバーの人手不足を解消することもできます。
車両の自動走行については世界的にも開発が進んでおり、専用のレーンなどのインフラが整えば近い未来に実現が可能になりそうですね。
2021年にはLaaSはどこまで進むのか
国土交通省の掲げるLaaSのビジョンを実現するにはまだまだ研究と実験を繰り返す必要があります。
システムやロボットの開発に加えて道路の整備やインフラなど多くの課題をこなしていかなければ実現は難しいでしょう。
ここでは実際にAIやIoT、ビッグデータを利用して2021年までに実現ができるLaaSにはどんなものがあるかを紹介していきます。
① 倉庫・システムのクラウドによる共有化
全国の全ての企業の物流企業の物流センターを共有化していくには大企業の協力と共有のシステムの開発などの課題が多く残っています。
現在通販などのECサイトの発展により、複数の小売企業の在庫をひとつの物流センターに集めて倉庫をシェアリングするシステムが活躍しています。
小売の商品をひとつのセンターに集めてシステムにより管理することで発送やピッキングをまとめて行えるので、時間の短縮・最適化が可能になります。
大きな倉庫を共有することで、配送先が同じ荷物をまとめることもできるので効率化や無駄のないトラックでの輸送が可能になります。
また、大型倉庫を持つ企業が倉庫の一部を他の企業へ貸し出し、倉庫のシステムを利用できるサービスを行っています。
あらゆる手段・施設を共有して最適な配送を目指すLaaSのビジョンの実現性が期待できます。
② AI・IoTを利用した配達の効率化
荷物を届け先まで送り届ける配達ドライバーは多くの住所や配達時間の情報から毎日配達ルートの選定をしなければいけません。
AIに配達先の住所や指定された時間を登録することで最適なルートを表示させることができます。
スマートフォンや専用のアプリケーションを利用することで荷物の日付・時間指定や交通状況を考慮してAIが配達するルートを指定してくれます。
配達ルートを指定する配達業務支援システムの試験導入は日本郵政がテストで行なっており、経験の少ない配達員の支援や最適なルートによる配送で人手不足の解消を期待されています。
③ トラックを持つ運送業者と企業のマッチングサービス
企業が配送を外注する場合、トラック業者と契約を結んで荷物を運んでもらうのが一般的です。
現在開発されているシステムに運送業者と企業とのマッチングサービスがあります。
運送業者は持っているトラックの大きさと運送の状況を登録します。
企業は運んでもらいたい荷物がある場合に空いているトラックを探してマッチングすることで荷物を運んでもらいます。
そうすることで運送会社は様々な企業から時間があるときに仕事を受けることができます。
運送業者を共有することで人員の削減と必要な時にトラックを呼び出せるので配送の効率化ができます。
④ 配送トラックのEV(電気自動車)化
環境問題における世間の目は厳しくなっており、省エネへ向けた取り組みを求められています。
物流業界でもトラックが出す排気ガスにフォーカスを向けて環境を守るために電気自動車化を進めている企業が出てきています。
Amazonは配送用EV車を発表し2022年までに1万台2030年までには10万台の配送用EV車を稼働する予定であると発表しました。
参考:日本郵便/銀座で電気配送車の運用開始、東京五輪までに800台導入 / LNEWS
日本でも日本郵政が2021年までに走行距離の短い都市部を中心にEV車を1200台導入する予定を発表するなどクリーンエネルギーへの移行を目指しています。
LaaS実現の一歩として街を走るトラックがガソリンや軽油を使わずに走るのはそう遠くない未来に実現しそうですね。
⑤ 特定のエリアでの自動配達ロボットによる配達
株式会社ZMPは高層マンション群での小型自動ロボットによる配達実験を提案しました。
実験では歩行者専用の私有地の繋がる高層マンション群でスーパーやコンビニ、ドラッグストアと提携して自動配達を行います。
注文者はスマートフォンで配達して欲しいものを注文します。お店は注文を受けると配達用のロボットに荷物を積みます。
あとはロボットが注文者の元へ自動で配達に行きます。
宅配による人員不足の解消や、人が直接商品を買いに出向かなくてもよいので新型コロナウイルスの影響による3密の防止策としても注目されています。
参考:ZMPが都市開発に参入、「ロボタウン構想」は生活をこう変える / 日経XTECH
ロンドン近郊のミルトンケインでは2018年から自動配達ロボットによる商用サービスをすでに開始しており、2020年6月までに10万回以上の配送を行なっており、自動配達による配送は普通になってきています。
日本でも自動配達による商品の発注・受け取りが始まるのはそう遠くない未来に起こりそうです。
まとめ
ここまでLaaS(Logistics as a Service)についての解説、具体例や2021年にはLaaSはどこまで進むのかについて解説してきました。
内容をまとめると
・LaaSが目標としている具体的なビジョン
・2021年までに実現が期待されるLaaSの例
について説明しました。
LaaSのビジョンは一見すると夢を見すぎているのではないか?と感じてしまいますが実現に向けての実験や検証を見てみるとそう遠くない未来に実現しそうなものばかりです。
LaaSの目標であるロボット・ドローンによる配送やトラックの自動走行のインフラの整備など、実現に向けた課題は多いですが、運送の最適化やドライバーの人手不足の解消へ向けた取り組みは解決する糸口がもう見えていると感じます。
物流業界の昔は影に隠れた少し地味なイメージでしたが、今は需要が拡大し大きく魅力的な業界へ変わってきています。
LaaSに向けた取り組みにより物流業界は今よりもさらに魅力的な業界に変わっていくでしょう。
今回の記事を読んでLaaSについて詳しくなり、未来の物流に興味を持っていただけたら幸いです。
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